いつものタクシードライバーさん

何年か前、連日深夜残業で、毎日のようにタクシーで帰宅する日々が3ヶ月くらい続いたことがありました。当時は田舎に住んでいて、毎日のように同じ時間に、同じ場所からタクシーに乗るので、同じタクシードライバーさんに当たる確立がとても高かった。案の定、顔見知りみたいになったタクシードライバーさんがいました。でも、やっぱり他人だから、一度も家の前まではお願いすることは出来なかった。
 ハノイ近郊で標準工場(レンタル工場=貸工場)への日本企業の誘致が盛んになっている。昨年後半から日本の中小企業の海外展開に目立った動きが見られたが、東日本大震災後は「日本で生産するリスク」がより顕著となったことから、中小企業の進出ラッシュを支える受け皿にベトナム北部がなりそうだ。ただ、貸工場事業では地場系が苦戦しており、日系企業のニーズにどう応えるのかが鍵といえる。

 「ベトナムの裾野産業の発展には日本の中小企業の力が必要だ。だが、日本企業の反応は鈍い」

 サイゴン・インベスト・グループ(SGI)の傘下企業、キンバック都市開発社(KBC)の担当者の嘆きだ。同社が運営するクエボ工業団地(バクニン省)内の貸工場の名は「日越裾野産業育成団地」。1棟約5,000平方メートルの工場を15棟も着工し、昨年夏から今年1月にかけて相次ぎ完成させた。間仕切りによって、1,000平方メートルからのレンタルが可能だ。しかし、50〜70社の入居が可能なのに対し、入居を決めた企業は今年8月から稼働する1社のみだという。

 がらんとした人気のない空き工場群を見ると、日本人担当者が不在なことや、5,000平方メートルという1棟当たりの大きさや建屋間の狭さが、使い勝手が悪そうな印象を与える。入居が本格化すれば、駐輪場や従業員用のトイレスペースも明らかに足りなくなる。

 2009年4月の起工式には当時の坂場三男駐ベトナム大使ら日越の政府関係者が出席したことから、「進出する裾野産業の日系企業に、ベトナム政府が税制の優遇措置を施すのでは」との観測も流れたが、これは空振りに終わった。国営のベトナム工商銀行(ベトインバンク)から裾野産業への優遇ローンを受けられるというが、ベトナムの一般的な貸出金利が20%であることを考えると利用は現実的ではない。

 「なぜ採算性を度外視して、15棟も一気に建設したのか」とのNNAの質問に対し、キンバックの担当者は「パートナーとして選んだコンサルティング会社が、50社を誘致すると着工時に誓約したからだ」と答えた。その後、キンバックとこのコンサル会社は提携を解消している。

 キンバックは苦戦しているものの、「日越」の看板を掲げているため、他国企業への工場レンタルは今のところ考えていない。それだけに、キンバックの事業意欲と日系企業が求める投資環境のミスマッチをどう克服するかが課題といえそうだ。管理費込みで1平方メートル当たり月額4.5〜5米ドル(1米ドル=約80円)という賃料の安さを武器に、日系企業のニーズをどこまでくみ取れるかが勝負となる。

 ただ、クエボ工業団地自体の販売は好調だ。これまでにキヤノンや台湾の鴻海精密工業(フォックスコン)などが入居。同工業団地の開発総面積は640ヘクタールだが、販売可能な用地は残り100ヘクタール程度と少なくなってきたようだ。

 ■タンロンは7社が確定

 一方、住友商事が運営するタンロン工業団地(TLIP、ハノイ市)内の貸工場「タンロン・アパートメント・ファクトリー」も好調だ。このほど建屋が完成し、最初の入居企業の生産設備搬入が先月から始まった。昨年10月末から賃貸の受付を開始したが、すでに金属加工・処理の企業などで、11区画のうち7区画(7社)の入居が決まっている。TLIP内で操業している大手メーカーへの製品供給や金属加工の提供などができる会社も多いようだ。

 入居が決まった7区画のうち、5区画が日本企業の海外初進出、2区画が日本企業のタイ法人による出資だという。クエボ団地にはない、日本人によるサポート体制や操業環境の改善が話し合われる毎月の定例会合など、海外初進出の企業にとっては、安心感が進出の決め手となることは間違いなさそうだ。

 レンタル料は1平方メートル当たり月額7米ドル。別途、管理費2,000米ドルなどが徴収される。2棟で合わせて5,970平方メートルを11区画に分け、494〜500平方メートルを1ユニットとして賃貸する。

 ■静岡の2社も好調

 静岡県内の2つの企業が08年以降に、既存の工業団地内にそれぞれ完成させた貸工場も好調だ。いずれも日系ならではの細やかな設計やケアが武器となっている。

 バクニン省イエンフォン工業団地内に6棟(1棟当たり1,250〜1,940平方メートル)の貸工場を持つフジプレシジョン。今年に入ってから引き合いが増えており、間もなく6棟全てが埋まる可能性が高いという。

 フンイエン省フォーノイA工業団地内のイデ・インターナショナルも、8棟(1棟当たり1,150〜3,420平方メートル)のうち7棟の入居が決まっているようだ。

 日系のレンタル工場は活況なだけに、クエボで日越連携をうたう「日越裾野産業育成団地」が日本企業の進出を加速させることができるのか、今後の動向が注目される。(遠藤堂太)

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